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ヤマト至上主義     洲史

ヤマト至上主義     洲史


ヤマトタケルが
女装してクマソを退治する話は
小学生のぼくには おもしろかった
草薙の剣で 草原を刈り 火を逃れ
逆襲する話は 血を沸き立たせた
秋の草原で試してみようかと思ったが 
小学生のぼくには 火は扱い切れず 止めた

南にハヤト クマソを討ち
北にエミシを従わせた 
史実とも伝説とも思える話を伝える
この小さな国

わが祖先はイクサを避け 
日本海がわずかに望める山奥に
身をひそめて暮らしたと伝わる
畑を耕し 田をつくり 炭を焼き 

わらびを干し 栗を拾い 雪に耐え
たまに行商が運ぶ魚を米で買い
そんな日々を喜びとして 過ごしたのだろう

わが祖先は 
ヤマトの威光を知らしめすために
剣を手にしたとは思えない
むしろ辺境の民として
ヤマトのサムライに 逆らいもせずに
すぐに膝を屈したのではなかったか

ヤマトタケルに連なる万世一系と自称する天皇の下
朝鮮や中国などへの侵略の戦争が引き起こされた
ぼくの集落では 
何人もが軍隊に駆り出され
帰って来なかった

「先の戦争は やむを得ないもので正しかった」
「教育勅語は現在でも通用する真理」
「日本は万世一系の天皇を持つ世界にまれな国」
「日本人は優秀だ ヤマト民族は優れている」
侵略戦争の記憶が薄れるなか
声高に叫ぶ者たちがいる

ヤマト魂 サムライジャパン
そんな言葉もあふれている

ぼくは それらにヤマト至上主義と名づける
自らの優秀さを誇示する時
優秀でないものへの排除の論理が潜んでいる
ぼくは ヤマト至上主義に反対する

帰ってこなかった人たちを悼むことは
先の戦争を正当化することではない
過ちを過ちとして直視することだ

*アメリカ合衆国での白人至上主義に反対する運動の報道に接して



京浜詩派 第220号(2017.12)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

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