下げ荷待ち 宮田 京之亮
下げ荷待ち 宮田 京之亮
標高二四五〇m
常念乗越(常念岳と横通岳の鞍部)
二〇一七年五月十三日 八時三十八分
「おめえは、将来何になるつもりだ」
下げ荷回収のヘリコプターを待つ間
鞍部の岩に寝転がったまま彼が言う
「ずっとここで、このまんまか」
空は、槍・穂高連峰の稜線を
くっきりと映し出している
「ここにいても、何にも身に付かねえぞ。
写真が出来るとか、絵が描けるとか。
何か持ってねえとな」
上高地のヘリポートから
彼のケータイ電話にヘリ離陸の知らせ
「やっと来るだか。
小まめにデンワ寄越せばいいだに」
よく晴れた鞍部に
もっこに包まれている下げ荷は
小屋の表玄関に置いていた
空のドラム缶とプロパンガス
ひと冬雪に埋もれてこの高山で過ごし
彼らもやっとヘリで下界へ
京浜詩派 第220号(2017.12)より
標高二四五〇m
常念乗越(常念岳と横通岳の鞍部)
二〇一七年五月十三日 八時三十八分
「おめえは、将来何になるつもりだ」
下げ荷回収のヘリコプターを待つ間
鞍部の岩に寝転がったまま彼が言う
「ずっとここで、このまんまか」
空は、槍・穂高連峰の稜線を
くっきりと映し出している
「ここにいても、何にも身に付かねえぞ。
写真が出来るとか、絵が描けるとか。
何か持ってねえとな」
上高地のヘリポートから
彼のケータイ電話にヘリ離陸の知らせ
「やっと来るだか。
小まめにデンワ寄越せばいいだに」
よく晴れた鞍部に
もっこに包まれている下げ荷は
小屋の表玄関に置いていた
空のドラム缶とプロパンガス
ひと冬雪に埋もれてこの高山で過ごし
彼らもやっとヘリで下界へ
京浜詩派 第220号(2017.12)より