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連なった廃墟   磐城 葦彦

連なった廃墟    磐城 葦彦


振り返れない 振り返りはできない望郷の念
そんな日々が積まれていくのを数えては
張り裂けそうな心に耐えている

いまだに先の見えない原発被災地
きょうもきて あしたをむかえるのに
事故の恐怖は少しもおさまらない
避難指示の解除をすすめているなどと
伝えられたりして新しい報がくるけれども
強大な力に振り回され 失ったものの重さで
陽を仰ぐことはできない

どこかで どこからか
だれか わからない声がした
六年もたったから もう大丈夫だと
風化と風潮が逆立って浮き彫りにされ
復興をまことしやかに装ったいつわりの姿
なにを 信じようか
見たくもない景色のむこうで
安全らしく手を招いているのは
炉心損傷は小さい メルトダウンは少ない
などなど どこから発信されたか

なかなか減らない海のセシウムの濃度
あの津波のようにひろがっていくが
除染は難航しつづけている
護岸付近では地下水位が上がったり
魚類群はすみかは失っている
ときは 二〇一一年のまま止まっている

立ち入り禁止の区域は 瓦礫の墓場
生きののこったものたちが さまよい
使い終わった防護服や靴が 風に舞っている

この国にはたくさんの原発と地震がある
再び同じことが起きれば爆心地と同じ
すべては 連なった廃墟



「京浜詩派 第219号」(2017年9月発行)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

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