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水兵達がやって来た    艀 参三

あの戦争のころ・7
水兵達がやって来た     艀 参三


原料となる生ゴムが来ないのに
六月になると
舞鶴から水兵たちがやってきた
が 良くみると
みんな年の頃 四・五十代
少し太りぎみの 徴用兵ばかりだ

何をするのかと 思っていたら
全員 我々がやっている
プレスの横に 整列して
「いいか 中学生の先輩たちから
良く教えてもらって 技術を習得しろ」

何のことはない
我々の仕事を横取りして
いったい三月から動員された
私たちは 何をするのか
作業を教える フリをして
小さな声で
「オッさんたち 艦にのらんと
あかんのと ちがう?」

「もう乗る フネ 無うなって
仕方なしに ここへ来たんや」
私たちは絶句した
あの連合艦隊がいなくなった

水兵たちの居住区は
私たちのところから
庭をはさんだ 向こう側
毎晩「廻れ! 廻れ!」と号令を掛けられ
ヘトヘトになって廊下みがきだ

精神注入棒とは誰が言い出したか
若い十七・八の 班長たちが
おっさんの 太っちょな
尻を叩いて 溜飲を下げている
本土決戦のために かき集められた
爆雷特攻のオッさんたち
私たちの オヤジの年頃で
家では かあちゃんが 泣いている

私たちの クラスでも
勉強の出来る 者たちは
みんな 海兵や陸士を志願して
工場作業から 抜け出している

「やっと 原料が着いたゾ!」
主任の声に 喜び勇んで駆けよると
一㍍角の 生ゴムの塊りが一ケ
表面がまっ白に 塩を吹いている

「こりゃ筏で 流れついたのか」
主任が しぼりだすような声で
原料をみつめて うなっている
あゝ 航空機増産の実体は―

朝礼のあとの ラジオ体操の時間
壇上の か弱い班長の私が
精一杯の運動をしているのに
向い側の廊下の窓に
たむろしている班長連中
「たるんどる 焼きを入れるぞ!」

私の担任は リベラルな画家あがり
「あんな奴を 気にするな
我々は まだ 中学生だ」
その声に 励まされ
細い手足を振ってみせる

昭和二十年の初夏の頃


京浜詩派 第219号 より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

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