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闘う姿 原 金治

戦う姿   
                           原 金治

二〇一七年五月二〇日
有明コロシアム
WBAミドル級王座決定戦
アッサン・エンダム(仏)対村田諒太

もちろん、村田に勝ってほしい
村田の勝利が見たい
勝っても負けても
なによりも
村田の戦う姿が見たい

防御を固め
前へ
そして
前へ

その闘う姿を
息子晴道君に
そして、私達にも
見せておくれ


 *村田諒太
   一九八六年生まれ。二〇一二年ロンドン五輪ボクシン
   グ・ミドル級で金メダル獲得。
   金メダリストの虚像と闘う男、謙虚さを失わないよう、
感謝の気持を忘れないよう常に心しているボクサー。
   六歳の息子晴道と三歳年下の娘がいる。

後日譚
 この詩は、対戦前日に記した「応援詩」。
 試合は当日テレビで観た。村田の前へ出て戦う姿があった。判定で村田が敗れた。試合終了直後、私は村田の勝利を確信した。エンダムは逃げ回りながら、「手数」をアピールする作戦に出た。「有効打」は村田の方がはるかに多かったことは、素人の私にも明らかに見えた。4ラウンドには村田がエンダムからダウンを奪った。三人のジャッジのうち一人が村田、二人がエンダムの勝利と判定した。
 エンダムの勝利が高らかに宣告された時、私は傍らの妻につぶやいた。
 「不可解だ、納得できない」
そして力なく続けた。
 「これが人生か、理不尽とわかっていても、結果
  を受容れざるを得ない時もある」

 村田にはこの敗北を小さな息子に説明する術はないだろう。悶悶たる思いだろう。村田の胸中を察して私は暗澹たる思いに沈んだ。
 この理不尽をしかと記憶にとどめるために、翌日新聞に掲載された採点表を切り抜いてノートに貼りつけた。村田の負けを採点したのは、パナマのグスタボ・パディージャとカナダのヒューバー・アールである。

 試合から六日後の五月二十六日付け朝日新聞は、世界ボクシング協会(WBA)会長のヒルベルト・メンドザ・ジュニアが、この試合の採点に問題あったとして、村田の負けを判定した二人のジャッジを六カ月の資格停止処分とし、村田とエンダムの再戦を指示したと報じた。異例なことである。
 これで村田の心の傷を癒すことはできないが、再戦を実現させ、村田がエンダムをKOで倒す日が来ることを切に望む。その日は、村田が晴れて息子に勝利を語れる日だ。



京浜詩派第219号より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

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