母よ 千島 ミツ子
母よ 千島 ミツ子
「どうしてこんなになっちゃったんだろう」
ときどき母は言うようになった
「おっかあ、また濡れちゃったよ」
娘の私に向って母は叫ぶ
雪が明るい
きょう誕生日。九十三歳の赤ん坊
なのにヘルパーさんが来ると枕元の
「核兵器廃絶署名してくれませんか」
と 言ってくれていた
私ががんばらないでいられようか
明日も母たちと駅前に立とう
母よ 千島 ミツ子 京浜詩派 第218号より
「どうしてこんなになっちゃったんだろう」
ときどき母は言うようになった
「おっかあ、また濡れちゃったよ」
娘の私に向って母は叫ぶ
雪が明るい
きょう誕生日。九十三歳の赤ん坊
なのにヘルパーさんが来ると枕元の
「核兵器廃絶署名してくれませんか」
と 言ってくれていた
私ががんばらないでいられようか
明日も母たちと駅前に立とう
母よ 千島 ミツ子 京浜詩派 第218号より