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家に帰りたいが   きみ あきら

家に帰りたいが   きみ あきら

腕時計は 机から転げ落ちたのだろう
泥まみれになっていた
午後三時五九分を指して止まっている
六年前の三月十一日 津波に襲われた時刻だ

避難解除が決まった翌日 町に戻って見る
家は傾き どの壁も亀裂がひどく入り ぶざまだ
テレビ・洗濯機・冷蔵庫が横倒しになり
食べ物とネズミやハクビシンの糞で黴臭い
建て直しか 咄嗟に心身が堅く
冷水を浴びたようであった

道路は復興されたが
日々の食材に必須のスーパーは潰れたまま
病院の再開は難しいという
帰る準備希望の町民は五七〇人で人口の三%以下
これでは地域での暮らしが成り立たない

放射能汚染も気にかかる
持参した線量計で測ってみる
毎時0・24㍃シーベルトを示すではないか
雨水の溜まった所では5・0以上ある
正常値範囲地域の三倍近くから百倍を越えている
これで除染は済んだと言えるのか
依然と高く 帰れる数値ではない

妻と二人の子ども
帰宅を楽しみにしているが
重なった悪条件を話さねばならないか
仮設住宅への帰り
政府への怒りが俄かにこみあげて来る

さらに此の上 町民への避難解除は
賠償や支援の打ち切りとセットのようだ
長く悲惨な生活を強いられ
苦しみのどん底であえいでいる人々を尻目に
思わく付きの計画をくだす政府

町民不在の行政措置
政治への不信感と憎悪がつのるばかりだ




家に帰りたいが   きみ あきら 京浜詩派 第218号より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

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