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人間ファウスト      久保 淫泉  京浜詩派 第218号より

人間ファウスト      久保 淫泉


蒸気機関車が走って行く石炭を燃やし石油を燃やし核燃料を燃やし走って行く脱線したまま走って行くもうもうと黒い煙を上げ走って行く自ら霊長類と名乗る人類を乗せ走って行く人類の乗った車窓から見える空は北京の冬の空パリの空スモッグで煙り先が見えず繋がっている空何処へ行くのかわからず手にした利便性を手離なせずにいる人類を乗せ蒸気機関車は走って行くもうもうとまっ黒い煙を上げ黒い煙は空を汚し大気の温度を上げ両極の氷を溶かす両極から流れ落ちる深層海流の温度が上がれば海水面の温度も上がる温度が上がれば膨張し水面そのものが上がる繋がっている海水は南海の楽園の海岸線を浸食する優しい波音は人間ファウストと囁き時として荒れ狂い人間ファウストと叫ぶヤシの葉も風に揺れ人間ファウストと歌う汚れた空気は激しい寒暖差を生み世界各地に異常気象をもたらす寒冷前線は世界各地に記録的な大雪を降らせ立往生するトラックの列かと思えば世界各地で川の氾濫水びたしの家々人々の絶望とあきらめ自然の猛威の前には人は為す術が無い野生生物の乗る車窓から白い雲の浮ぶ高く澄み切った青い空が見える生き物達は笑ってる殺る者も殺られる者も笑ってる地球に生きる者全て誰かの命で生きている生きてる生命を繋いでるそれがこの星の理だから笑ってる地球の生態系の頂点にいる人類はその欲望の為に精霊の棲む森を焼き払い無数の命を奪う焼け跡から野生の生き物達は人間ファウストと叫ぶ無数の生命の煌めく地球で人類一種が欲望と憎悪で狂気に走り殺し合う終り無き欲望と憎悪の連鎖人類の乗った蒸気機関車は何処へ行く車輛の中は何時も何処かで戦争だ憎悪が渦を巻いている地球上の全生物を何度も絶滅させる量の核爆弾を積んで脱線したまま猛スピードで走って行く止まる事など頭に無い口では声高に世界平和を言うけれど武器を手放す事は無い野生の生き物達は言う人間ファウスト人間ファウスト



人間ファウスト      久保 淫泉  京浜詩派 第218号より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

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