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マンチャ村一人旅   小泉 克弥

マンチャ村一人旅   小泉 克弥

   1

コンスエグラ 
永年行ってみたかった風車の町
ホテルのベランダに出ると
丘を登る道のてっぺんに風車が見える
憧れていた風景が現実になる

心せきながら 坂道を登る
空が澄んでいる
この深い青はなんだろう
空の底が透けて見えているのか

石積みの円筒形の躯体を白く塗り固め
黒いブリキの円錐帽をかぶって
黒塗りの木枠の羽根を四つ伸ばしている

なぜ ドン・キホーテは
風車に突撃したのか?

その狂気は
毎年ノーベル文学賞の頃になると
「ハルキスト」が寄り集まって
受賞という狂気に駆られるのに似ているだろうか?

「狂気」は 止められないのかもしれない
安倍晋三の戦争への狂気も
同じことなのだろう

南スーダンでは 安倍晋三の眼には
どんな風車が回っているのだろう?


   2

風車の丘の上からは
地平線の果てまで
赤茶けた台地が広がっている
遥か彼方に人家の一群れ
その遠く左にもう一塊

丘の麓の取り入れの終った畑を
一台の耕運機が耕している
細かい土ぼこりをあげながら


   3

もう一つの風車の町 カンポ・デ・クリプターナ
この町は 丘の斜面を家々が這いのぼり
その丘の頂上に 人家と風車が混然と立っている
風車には観光ガイドのような女性が待ち受け
見て行って と商業主義的に声をかけて来る
道の向うのレストランからは 年配の女性が
食事して行かない と誘う
「昼の定食ってあるの?」
「それはないわ」
アラカルトで法外な料金を吹っ掛けるのか
なぜか身構えてしまう

風車から外れたところに お土産屋があった
店の老婦人が出てきて話しかけて来る
達者な日本語だ
ビックリして聞くと
日本人観光客が多く 自然に覚えたのだと言う

あなたもエスパーニャ語がお上手ね
エスパーニャに住んでるの
いいえ 旅の者です

純朴そうなそのお店で
マンチャ地方特産のチーズを 二つ買った



京浜詩派 217号より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

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