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親孝行   須田 嘉文 (京浜詩派217号より)

親孝行   須田 嘉文

僕が幼少の頃 喘息という病気は
あまり知られていなかった

そのときは日曜日
何かの発作で 呼吸もままならない
異常に気がついた母 カッパを着た自分をおぶさり
土砂ぶりの雨の中 タクシー・電車を乗り継ぎ
近所の町医者を駆けずり回ってくれた

「単なる風邪だろうから 他をあたって」
どこも門前払い それでもあきらめず母は小走り
「あとここしかない」鬼気迫る
ずぶ濡れの母と自分を見た 町医者の先生
すぐに迎え入れてくれ「それで風邪なわけがない」
真っ暗な院内で明かりを灯し 診察してくれた
当時 よくわかっていない喘息について
研究をしていた有名な方だった
名前も顔も覚えてない 命の恩人
自分の病気が 気管支喘息だと判明した

数年後
引いた風邪から 発作が発生
今回はひどく 点滴でも収まらない
自分の風邪が伝染った母親
母が測った体温計は四〇、九度
それでも徹夜で自分を看病していた
「息子さんより重症。早く入院してください」
そう医者に言われても「私は大丈夫」と
そのまま看病を続けてくれた


母は七三歳 心臓病のほか
ストレスからか 精神的な病も患っている
母の状態に苦心するたび
あの時のことを思い出す

母の愛情は 生涯忘れない
自分に家族が 子どもができたなら
母から受け取った愛情を 注ぎたい

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

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