スリランカ紀行 古久保和美 (京浜詩派 216号より)
スリランカ紀行 古久保和美
一. アーユーボーワン
「アーユーボーワン」
両手を胸元で合わせ
スリランカ航空の乗務員が出迎え
「長生きを願っています」
転じてあいさつの万能語
おはよう こんにちは こんばんは
さようなら
返す言葉も 「アーユーボーワン」
シンハラ語っておもしろい
文字もかわいい
かたつむりのような丸文字
スリ 光り輝く ランカ 島
一九七八年
イギリス連邦セイロン自治領は
スリランカ民主社会主義共和国
北緯六度から十度熱帯モンスーン地帯
成田からの飛行時間九時間 時差三時間半
空から見下ろす景色は一面の緑
パソコン資料だけで現地集合のツアー
ビザがいるって
パスポートの残存期間が六か月以上って
再申請はグダグダ迷わず十年
ビザは旅行社に手配を頼む
ビザ申請料金と海外保険
持ち出し費用は増えていく
飛行機のeチケットを印刷して持参
目印は旅行会社のプレート名
コロンボの国際空港の出口
なんと二十代の若者四人
ご夫婦一組 一人ずつの老若女子
ホテルのボーイに挨拶
そして 冷たいマンゴージュースに
アーユーボーワン
二.シギリヤ
象に乗って頂上からの夕焼け鑑賞
その宣伝文句にひきつけられた
現地添乗員曰く
象乗りとシギリヤロック登山は別
夕日をみたら五分で真っ暗
明かりがない所では歩けない
一頭の象が川で水浴び
人懐こくて鼻に おそるおそる
柔らかくスポンジ状
シギリヤロックが見える蓮池まで
象の背骨がとんがっており
毛布・厚地のクッションをのせ
台座を縛り付ける高さ三メートル
大人六人が座れる
乗り込むための台上に登って
靴を脱いで象の背へ
道路沿いを十五分ほどかけて歩む
写真撮影依頼は一〇〇ルピー
ジャングルを威圧して聳える
シギリヤロックの登頂だ
高さ約二〇〇メートル
八人中でサポートが必要な存在
と目を付けられてしまった
「ノーサンキュー」 でも腕を取られる
ここも血なまぐさい歴史がある
一四〇〇年前父親を殺し
王に就いた兄 弟の復讐を恐れ
岩山の頂上に王宮を築いた
中腹にある岩に描かれた壁画
シギリヤレディーは上半身裸で艶めかしい
宝石入りの髪飾りとペンダントと色彩も鮮やか
頂上は三六〇度の絶景
一人でも登れたとは思うがサポーターを二人
ここは譲れないと支払いは 日本札で二千円
二千ルピーより価値があるから
三.象の孤児園
キャンディの西キャーガッラ郊外
ジャングルで保護された
一〇〇頭ほどの象がいる
ちょうど園内散歩の時間
目の前を二十頭近い象の行進
速い
一瞬に通り過ぎる駅伝ランナー
体が大きいので残像が残る
その後 見物人が移動して
広場を散策
水浴びってアナウンスがあったのだろう
土曜日で家族連れが多く ぞろぞろ
人 人 人
商店街の道を突っ切って歩き出した
川の光景が飛び込んできた
行進の時より 多いか
象が歓声を上げているようだ
岩に鎖で足を繫がれているのもいる
川に寝転がっていたり
鼻で水を掛け合ったり
体を洗ってもらっていたり
そのうち
噴水のシャワーが回転を始めた
最前列の見物人にも水しぶきが飛ぶ
動物園では数頭離れて見るだけ
目の前に繰り広げられる光景
見学者の為のセレモニータイム
ちょっと高めの入園料金だが
象の保護に使われているかしら
少しは環境保護に貢献したかな
日本の動物園に引き取られた象もいるようだ