詩の憲法パンフ「私の70年メッセージ」ー横浜詩人会議(京浜詩派)


詩の「憲法パンフ」 頒価一部50円
◆掲載作品を 護憲、平和運動などに、自由にお使いください。無料です.その際は、ご連絡ください。
14名の作品が掲載されています。
金目 荒波 剛
原発事故の実情を視察する担当大臣
この声届けと集まった被災の住民たち
帰還困難、居住制限、指示解除準備
道一本で線引きされる杓子定規の
交通事故の被害を基準の補償金額の
私たちはお恵みを求めるのではない
事故原因と責任は、被災者の生活は
責任と賠償は表裏一体 と求めるのだ
「結局、金目でしょ」と言ってのけた
――私の頭にあの場面が蘇った
逗子のお屋敷街 里山の遊歩道
私は学生、友と二人で来ていた
「ぼくのお父さんはS・Ⅰだよ」
坊ちゃん刈りは誇らしげだった
父は人気流行作家 今は超右翼政治家
お雛様と 石田 百夏
新婦人二月班会、テーマ、学校訪問
日の丸も、君が代も
侵略戦争のシンボルだったもの
多くの反対の中、制定したとき、
「強制されるものではありません」
と言った大臣は誰だったか?
いま、歌わぬ教師 生徒が迫害される
協議しているテーブルに小さなお雛様
サークル・インテリア小組のポプリ雛
「これ、一対ずつプレゼント、どう?」
「いいね!」「いいわ!」
差別をなくして 平和を願う
私たちの心をポプリとともに詰めて
三月三日、お雛様と学校に行く。
あの日を忘れない 磐城葦彦
大嫌い 大嫌い 大嫌い
何度も 何度も 胸に刻んできた
あの日 夏の日 陽が燃えていた
わたしは ラジオからささやくような
玉音放送の かぼそい不安な声を
たしかに たしかに 聞いた
スミヌリ教科書を手にした少年時代
過ぎ去ったとは 到底思えない
戦争の犠牲を沢山背負っているのに
あれから 七十年も経つというのに
また アベノミクスに騙されていくのか
「我が軍は」と呼んだ宰相は 大嫌い
まだまだ過去でない今日から明日へ
いまあるこの国をみつめなおし
あの日を忘れてならない
健ちゃんの一言 梅津 弘子
本が大好きな健ちゃん
珍しく 泣きながら読んでいる
軍用犬のお話しの本らしい
戦争は 犬も 連れていったんだ
猫も 集められたんだって
鳩も
平和でないと ペットと暮らせない
健ちゃんは テレビに見入る
紛争地の 子どもが血まみれ
母が 死んだ子を抱いて泣く
一言 呟く 戦争はイヤだな
おじいちゃん 孫に赤紙がこないよう
今日も 9条ニュースを配達している
アベノタクラミクス きみ あきら
イタリア・ドイツはかつてゲルニカを
日本は重慶を 長期にわたり空爆
民衆を恐怖から戦意を喪失させ
降伏を狙った住民皆殺し爆撃であった
米国も東京は下町を重点に焼き払った
果ては広島・長崎に原爆を投下
住民への無差別破壊的暴力を強行した
残忍かつ野蛮の極みであった
さらに米国はベトナムで枯葉作戦爆撃
コソボ・湾岸・アフガン・イラクでの
不発化で地雷ともなるクラスター爆撃
米国の企みも非軍義的対象が目標
人道に反する国際法違反だ
こうした戦争に加担する法案づくり
アベノタクラミクスは世紀の犯罪だ
行 進 小泉 克弥
全国高校野球 春の選抜大会
選手の入場行進がはじまる
なんだ この手の振り 足の運びは
雨の神宮 出陣学徒壮行会と同じだ!
行進が終わって
自分の位置に一列ではいて行くとき
普通の子の歩き方に戻っていた
そうさ スポーツは平和の象徴だもの
もう二度と 沢村投手のように
戦場で死なせてはいけないのだ
出場できたうれしさ
ここまで来られなかった無念
悲喜こもごもの幕が開く
碑 洲 史
山深い十七軒の集落
神社に登る石段のかたわらの
碑(いしぶみ)には
五名の戦死者と
十五名の出征者の氏名が
階級とともに 刻まれている
戦死者のなかには私の伯父さん
出征者のなかには私のお祖父さん
キノコの見分け方を教えてくれた
片足が不自由な隣のおっとう など
この先
新しい碑をつくらせてはならない
子や孫や甥の名を刻ませてはならない
新たな人の名を刻ませてはならない
ぼくらの国 比嘉名 進
戦後七〇年 ぼくらの国は
平和憲法「九条」を もち
誰一人 外国人を 傷ツケズ
誰一人 殺シニ 行カナカッタ
自衛隊 創設六〇年 ぼくらの国は
「歯止め」を もち
誰一人 戦闘地域に 行カセズ
誰一人 殺シニ 来ナカッタ
わが軍は「積極的平和主義」ナノデス
あの男の奇妙な言葉で ぼくらの国は
ススメ ススメ ヘイタイ ススメ
もう一度 靖国神社で 御魂の数を
精魂こめて 数え直す ノデショウカ
良心 府川 きよし
信長は 明国を武力で奪おうとした
それを秀吉が 実行した朝鮮侵略
秀吉の死で 敗れて逃げ帰った
二〇世紀前半
狂ったようにめざした 大東亜共栄圏
東アジアの武力制圧 人権抑圧
もうそんなこと みんなシラケている
いまは隣りの国と 仲良くする時代
虚勢をはる勢力が 過去をわすれ
わが軍は強力だ と叫んでいる
侵略され 傷めつけられた国民は
日本には誠意がない と傷ついている
メルケル首相 古久保 和美
ドイツは
二度と戦争を引き起こさないように
加害者ナチスへの追求を絶やさない
東日本大震災で露わになった
原子力発電所爆発の恐怖から
二〇二二年全廃を打ち出した
その先頭に立っている
初の女性首相アンゲラ・メルケル
東ドイツの言論統制の中で
物理学者の道を歩き出した科学者
来日講演で歴史から学ぶこと
女性の社会進出を訴えた
日本の首相はまるで反対方向
七〇年間守ってきた日本国憲法と
私は歩みをともにする
良いことは 良い まえだ 豊
いくら時勢が変わっても
良いことは 良いんだよ
だって この七〇年の間
この地球の中で
様々な紛争があったけど
我が日本は 出掛けてなかった
一人も殺し合いをしなかった
これは 世界の模範である
いくら時勢が変わっても
良いことは 良い
それが我が国の
使命と任務である
つぶやき 豊 公子
特定秘密保護法に「賛成」「反対」の
シール投票の時だった
恰幅のいい男性がシールを手に
「特別のことだけ秘密にするんだろ
だれにだって
秘密にしたいことはあるよね
国にも秘密にしたいことは
あるんじゃない」
一瞬ドキッとした
私は顔を見上げて
「戦前もいろいろなことが
秘密になったのよね」とつぶやいた
「そうか戦前か」
男性は貼りかけたシールを丸めて
ポケットに突っ込んだ
(「あつぎ・九条の会」四月号一〇二号より転載)
歯車のひとつに 吉村 悟一
大東亜の妄想に取りつかれた
つまらないチンピラどもを
きれいさっぱり大掃除したあとは
山野に美しい花を咲かせる
憲法九条を生まれたもとの姿にもどし
核廃絶と平和の礎を全国にきざみ
自由と平等を空気のようにして
民主的な話し合いをたっとび
子どもたちは希望の光りのもとにおき
働く者は行きとどいたゆとりの中で
文化と芸術とスポーツを手にして
老いては清涼なよろこび
こんな政治の陽ざしをあびる
新しい国造りの草の根の仲間たち
その歯車のひとつに 私はなりたい
「海外で戦争する国」づくり 米原 幸雄
米国が起こすあらゆる戦争に
自衛隊が参戦・支援する「戦争立法」
自衛隊を「戦地」に派兵し、
「殺し、殺される」戦闘活動を行う危険。
米国の戦争への軍事支援を歯止めなく
拡大するということ。
「戦争立法」に備えるような事態が
自衛隊で始まっています。
「殺し、殺される」武力行使を想定した
とみられる”遺書”の強要です。
所属部隊の隊長ら上司から
「家族への手紙」を書きロッカーに
置くように服務指導されたと言います。
書かされた元隊員は「殉死(戦死)」への
覚悟を求めたものであろうと感じた。
テーマ : 詩集・詩誌・詩に関する本
ジャンル : 小説・文学