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愛しい人のつぶやき     豊 公子

愛しい人のつぶやき     豊 公子



憲法施行 七〇年の記念日
首相は 憲法九条改定発言
それで
四〇年以上も 前のことを思い出した
お姉ちゃん五歳
妹の佳代ちゃんゼロ歳
ベトナム戦争のころだ

アヤトリをしながら
お姉ちゃんが つぶやいた
 戦争はイヤだよ 血が出たら痛いよ
 みーんな 仲良くしましょ
 そう言えば いいのに

 戦争って なんだろう
 ワルモノを 殺すのかな
 悪いことをしたら ワルモノかな
 

 なにをすると ワルモノかな
 あー 私はワルモノかもしれないよ
 佳代ちゃんの ホッペをつねったし
 お母さんの口紅で お絵かきしたし
 悪いことしたお手てを ペンペンしとこ

私は 娘を抱きしめた

(ニュース「あつぎ・九条の会」一七年五月号 初出作品)




「京浜詩派 第219号」(2017年9月発行)より




テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

五月五日   佐々木 和善

五月五日   佐々木 和善


悪霊を追い払う こいのぼり
両岸の間に縄を張り 川の上を泳いでる
今日は こどもの日
一ノ宮 二ノ宮 三ノ宮など国府祭へ
金目観音では 川まで神輿をかついで
こいのぼりの下を せり出した
にぎやかな老人が 大団扇で
ヨイヤサァ ヨイヤサァ
若い衆が ヨイヤサァ ヨイヤサァ

岡崎の鈴川へ行くと
同じように 川の上にこいのぼり
ここも にぎやかに泳いでいる
模擬店も出て にぎわっている
親も子も笑い 
凧よ 天高く泳げ
健やかな子どもに育っていけ



「京浜詩派 第219号」(2017年9月発行)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

虚空    久保 淫泉

虚空         久保 淫泉

シリアの空は青く
無限の宇宙の暗闇へと続く突き抜けた
透明な青だ

大国の思惑が入り乱れもつれにもつれて
平和への道程は果てしなく遠い
テロリストと民主勢力が混在し
無差別な空爆学校も病院も女も子どもも見境なく 
国際法上禁止されたクラスター爆弾と化学兵器の使用それで戦争犯罪犯罪者が勝利すればそれが正義だ
平和は人々の嘆きと絶望 あきらめの先にあるのか
平和をもたらす神の教義は何処へ行った
神の教義を逆手に取り人々を束縛し拷問し殺戮する集団
同じ神を崇拝しながら憎しみ合い殺し合う

止まぬ空爆 銃声 砲撃音
泣き叫ぶ子どもを抱え血を流し逃げ惑い着のみ着のまま捨て去った故郷
そこに人々のくらしは無い四千年続いた人々のくらしが無い

青く澄み切った空の下
破壊し尽くされた街
累々と続く瓦礫の山
重く澱んだ静寂

瓦礫の下にどれだけの屍が眠っているのか 
生きながら瓦礫の下に埋もれ助けの声も抗議の声もあげられずに死んでいった人々
瓦礫の下に肉親の屍を残し故郷を追われ一筋の望みに縋り逃れた先に待ち受ける差別と偏見
そこで産まれる新たな憎悪と犯罪 争いの火種 終わりなき憎悪の連鎖
独裁者は 人々の血で大地をどれだけ穢せば満足するのか
神は どれだけの人々の嘆きの声を聞けば平和をもたらすのか

神はいずこに




「京浜詩派 第219号」(2017年9月発行)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

四季島        小泉 克弥

四季島        小泉 克弥



ホームから溢れるほど人がごった返している
かと思ったら 大間違い
そのホームには 乗車券を持ってる人以外は立ち入り禁止
最高級クルーズ列車にはその位の配慮は当たり前
でも 国家元首級ではないので
赤いカーペットを敷くのは見合わせたとか

一番高いスイトルームは 
三泊四日 二人で百九十万円
母子家庭の年収以上だ
図らずも 格差の見える化になった

JR北海道では生活路線が次々と廃線の危機
「乗って見たかったけどお金がない」人とちがい
「乗れません」では済まない現実が

国鉄解体・民営化に舵を切った時
鉄道は 社会インフラであることを止めた
儲かれば拡大 赤字なら廃止 収益第一主義

三泊四日一人九五万円は
一年に直すと一人約八七〇〇万円
四人家族なら三億四八〇〇万円
それを超える収入はすべて税金として納めてもらう
これが富裕層に対する累進課税の原則である
株式配当収入十億円の人は 四人家族なら
三億四八〇〇万円を超える分
六億五二〇〇万円を税金として納めてもらう 
金持ちだもの その位は当たり前じゃない?

累進課税と聞くと 俺のことかと恐れる人がいるが
年収が八七〇〇万円×家族人数分あるか
一度確かめてみるとよい
四季島に「せめて一生に一度は」という人は
心配しなくてよいミドルクラス



「京浜詩派 第219号」(2017年9月発行)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

四つ葉のクローバー   古久保 和美

四つ葉のクローバー  古久保 和美


おばあちゃんは
四つ葉のクローバー探しが好き
わたしだってできる
よし おばあちゃんより さき
みーつけた 
うーん 葉は3つだね
 あっちにあるかなー
 あっ よつば
あれ いいこと おこらないよ
 いい事が起こりますようにってお願いするの
 
ママにバースディカードを作ろうか
どうやって

おばあちゃんと てをつないで かえる

グリーンの台紙 ピンクの折り紙を はる 
篠崎公園で見つけた四つ葉のクローバーを四枚
黄緑の折り紙の方に わたしのサイン
「ち」と「CHI」
おばあちゃんは逆さまって見本を書いてくれた
お絵かき帳から切り取った
長い髪の女の人ドレスをピンクいっぱいにした
それが ひょうし
 服にピンク色がついちゃったね
 アリエルのリュックにいれるね
 暗くなったのでワンちゃん公園は なしね

ルンルン ママにプレゼントできる
でんしゃで ねられなかった
ハッピーバースデー うたうんだ
新宿駅でうたいだしたら
おばあちゃんが恥ずかしいからダメって
 レストラン前で ママ パパ カズくん
  ありがとう 取っておくね
  ママ うれしそう

おなか いっぱい




「京浜詩派 第219号」(2017年9月発行)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

彫ってみろや     児丸 久

彫ってみろや     児丸 久


だらだらと生きるな
くだくだと生きるな
パソコンで生きるな
鉛筆なんかで生きるな
ノミで生きろ
目鼻をつけて
削っていくなか
掘り下げていくなか
簡潔な生き方
彫ってみろや

木材で家屋を造るよう
石材で碑文を彫るよう
ノミ一本で
ノミ一本の覚悟で
思いの人生
彫ってみろや。



「京浜詩派 第219号」(2017年9月発行)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

裁判長 聞いて下さい    梅津 弘子

裁判長 聞いて下さい    梅津 弘子



東京地裁前 白髪まじりの集団が朝早くから集まる
箱根から 三浦半島から
電車 バスを乗り継いで 霞が関にきた

この歳で 裁判の原告になるなんて
老人たちは 怒りに燃えている
小柄な委員長が 年金減額憲法違反と叫ぶ
330人が傍聴券を求めて並ぶ

ざわめく法廷に 裁判官が入廷
一瞬 静かな空気がながれ 
戸惑う老人たちに
弁護団長 「年金は財産権」と勇気づける

「裁判長」 加藤原告団長の声が法廷内に響き
原告の陳述が始まる

老いていく身に 国の酷い仕打ち
切々と 訴える
原告団長の 肩を 何万という
高齢者の悲鳴が支える

田中原告も 
夫亡き後 病気になり
月額四万八千円の年金で生きていけず
家を担保にして生活している と
傍聴席の老人たち 禁じられているが思わず 拍手
それを制止されることもなく 陳述がおわり
裁判長は 二人の原告に ご苦労様 
ねぎらいの言葉
その言葉は 裁判長の心の声だろう

百年安心 と言った あの大臣の顔が浮かぶ
その政権の下で どんな判決がでるだろう



「京浜詩派 第219号」(2017年9月発行)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

夢売る職業   佐々 有爾

夢売る職業     佐々 有爾


デジタルの電波時計は
八:二二 七月九日 日曜日
ステレオからご機嫌なサウンド
健常者は酒飲まないと
ツマラナイというが
障碍者の世界は素面でも
面白いことばかり玉手箱
おもちゃの缶詰 宝箱
当たり前じゃツマラナイ、アートの世界
でも素直に 東山魁夷はきれいだと思う
きれいだ

合理的、自動車を工場で作るようには
美術はできない
(こんな薬飲んでていいんだろうか?
 主治医は服薬を勧めるが)
詩は 世に夢売る職業
やはり芸術性が求められる
社会性は大切
でも みんなが詩に求めているのは
芸術という名の 夢だと思う



「京浜詩派 第219号」(2017年9月発行)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

スイカを植える     府川 きよし

花水川物語213

スイカを植える       府川 きよし

ムラサキ花大根の種を 欲しい方が
何人も現われ 種を収穫
まだ少しあります 秋に撒くので
欲しい方は 気軽に電話をください
この花が 方々の土地に増えれば嬉しい

そのあとに鶏糞を たくさん入れて
園芸店で 念願のスイカの苗を購入
大玉二本 小玉二本を花壇に植えた
水もたっぷり 撒いて
すくすくと育ち つるが伸びてきた
土手の雑草を 刈り取って敷き
乾燥を防ぐ 敷き藁とした
黄色い花が咲き 実り始めた

道路脇の花壇は 道行く人も楽しんでいる
 今度は 何を植えたのかなあ
ツルが伸びてきたスイカが 注目されて
 早く大きくなれ もっといっぱいなれ
 だんだん 本物のスイカに近づいているぞ
みんなの期待も 膨らんでいる

そろそろ追い肥 化成肥料を撒いてみよう
梅雨に入って 適度に雨が降る
七月中頃になれば 黒い筋が目立ち
もっと太ってくるだろう
どんな スイカが実るのか
楽しみが増えてきた

毎日通る人も 自分のスイカように
愛情を 降り注いでいる
可愛くて しょうがないのだろう

ナス トマト ズッキーニ オクラも植えた
花壇の空いている所に
ミニひまわり ケイトウ ニチニチソウ
キバナコスモスの 花も植えた
だんだん 賑やかになってきた



「京浜詩派 第219号」(2017年9月発行)より

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ジャンル : 小説・文学

連なった廃墟   磐城 葦彦

連なった廃墟    磐城 葦彦


振り返れない 振り返りはできない望郷の念
そんな日々が積まれていくのを数えては
張り裂けそうな心に耐えている

いまだに先の見えない原発被災地
きょうもきて あしたをむかえるのに
事故の恐怖は少しもおさまらない
避難指示の解除をすすめているなどと
伝えられたりして新しい報がくるけれども
強大な力に振り回され 失ったものの重さで
陽を仰ぐことはできない

どこかで どこからか
だれか わからない声がした
六年もたったから もう大丈夫だと
風化と風潮が逆立って浮き彫りにされ
復興をまことしやかに装ったいつわりの姿
なにを 信じようか
見たくもない景色のむこうで
安全らしく手を招いているのは
炉心損傷は小さい メルトダウンは少ない
などなど どこから発信されたか

なかなか減らない海のセシウムの濃度
あの津波のようにひろがっていくが
除染は難航しつづけている
護岸付近では地下水位が上がったり
魚類群はすみかは失っている
ときは 二〇一一年のまま止まっている

立ち入り禁止の区域は 瓦礫の墓場
生きののこったものたちが さまよい
使い終わった防護服や靴が 風に舞っている

この国にはたくさんの原発と地震がある
再び同じことが起きれば爆心地と同じ
すべては 連なった廃墟



「京浜詩派 第219号」(2017年9月発行)より

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