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愛犬と   須田 利正

愛犬と   須田 利正


愛犬ダイヤ ソワソワ
私を見て しっぽフリフリ
両手を上げ 寄りかかる
いつもの散歩の合図
わかったよ 郵便局までいこうね

もうすぐ一七歳 元気
引っ張るように 階段ぴょんぴょん
早く行こうよ
急がないで あぶないよ

まずは電柱 こんにちは
お世話になります ブロック塀
草花さんも 足上げて
クンクンお友達
右に左に寄り道とくい

郵便局 
ダイヤ ちょっと小包とるから 
まっててね
目パチクリ まるくして
わかったよ 返事しているよう

小包の支払いし
さー帰ろう
腰までふるふる 大喜び
我慢していたのか
いそいで電信柱 こんにちは

郵便局員 息荒げ
追いかけてくる
鍵付きの小銭入れ 振り上げて
又もわすれた ありがとう
携帯電話紛失したばかり
老いの七一歳



京浜詩派 第230号(2020.6)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

追悼 磐城葦彦 3作品 

イギリス海岸

わたしの なかの カムパネルラ
あなたの なかの わたし
イーハトーブの 異国情緒に酔いながら
美しく 輝く 岸壁と みどりの
イギリス海岸との 出会いを
どれほど 夢見たか

星雲が 幾つも 解き放った 光の滴が
溢れていると語った 友のことばだったか
あるいは 真黒のフロックコートを羽織った
荒地を みつめていた 詩人だったか
岩手山と対峙した 姫神山から吹いてきた
セロの奏でる 風の歌に 誘われ
わたしは 野宿も 覚悟で 旅立った

注文の多い店で コーヒーを 一杯
銀河ステーションはどこかと 地図を探る

ここは 間違いなく イギリス海岸だ
波打ち際に 立っていると
もののけのかたちが 浮かんできた
それらは みるひとの眼に
想像するがままに みえてくるという

わたしが カムパネルラに 抱いた
じぶんだけの 多情で 勝手な 片思い
ジョバンニに悪い かりそめの 恋
きれいな ルビーの珠を イヤリングにし
あなたに贈ろうと 種山ケ原を 掘ったのも
思えば むなしい作為だったか

わたしの 憧れの イーハトーブ
又三郎が 森を徘徊しているところ
ウルトラマリンの空の下 馬の嘶くところ
だれかが おしゃべりしている
だれかが うたっている

わたしが あなたと
きのうも おとといも さきおとといも
歩んだ あなたの なかの わたし
それなのに きょうは ひとときも
歩こうとしても 足が 動かない
かなしばりにあってしまったか 

イギリス海岸のむこう
早池峰の奥 シグナルが 点滅
遠い 北の 城下町の 友と
黒い帽子をかぶり 後ろ手に手を組んだ
あの 詩人とが わたしを 幻惑し
イーハトーブの 魔力で とりこにしたか

わたしの なかの カムパネルラ
あなたの なかの わたし
いま 二重にかさなりあい 写っているのは
永遠の イギリス海岸の もののけ

 *イーハトーブは、岩手県東部の地方。
イギリス海岸も、宮沢賢治の作品中の呼称。



多喜二とともに


夜が 足早に やってきた
夜が どっぷりと 埋まってしまった
朝が 夜明けを 告げなくなった
朝が 闇をかかえたまま 動かなくなった
昼が とばりを背負い 重くなった
昼が 時間を寄せつけずに 止まった

そういう状況を さまよい
わたしは 多喜二について考えた
そのありかについて考えた

そうだ 多喜二の 生きて死んだときも
同じ 夜と 朝と 昼の 混った
乱れに乱れた くりかえしに
息が できなかったに 違いない

多喜二は どこでも たたかった
たたかいの一兵士は どこへでも出向き
はたらくものたちの姿を 直視し
たしかめながら 血と汗を 書きつづけた
筆こそは 鋭い 銃眼
撃つ相手は あいつらだ
官憲との弾圧との たたかいだ

「文章は海綿だ」
「作者の心理と感情だ」
「たっぷりと浸れ」
「プロレタリア的に生き生きとして……」
「生活と行動」
「そこから生まれるのが……」
たたかいの のろしだ と
わたしは いまになって五体が
ふるえるほど 強く 感じた

勝手な きままな 支配と権力のふるまい
首切りも あたりかまわず 横行
いつになっても あいつらは 存在
弱いものは いつも 弱く
きのうも きょうも あしたも
のたれ死と 同じ
その先は どうなるか

多喜二は 暗い深淵のむこうで
手を ふっているか
かすかな 燐光を 放っているか

ごうもんの果てに 息絶えたが
多喜二は 一歩 また 一歩 と
たたかったから 殺されたが
わたしのなかの 多喜二は 死んでいない
多喜二の 言葉は 不滅

いまも この世は 戦場だ






何度でも問う 平和を


大海原のむこう たくさんの国がある
たたかいをやめないで 血を流している
貧しく 飢えた 国がある

かつて 祖国は 同じように
いのちを失い 町も 村も 荒れ果て
再生の道さえも 失ったが
あかりをともし 生きる力を呼びおこし
未来へつないだのは 平和の証し 九条
この道を歩くかぎり 失うものはない

殺さない 殺されない 教訓を
治夏秋冬 辻説法で 何度でも 問おう
無力なんかではない 詩人の言葉で
きょうも また わたしの心は高鳴る


京浜詩派 第230号より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

ペリカン万年筆   国枝 健

ペリカン万年筆   国枝 健


終活のひとつに 机の引出しを整理
一本の万年筆が出てきた
二十二歳の時 新聞社に職が決まり
祝いに 母がくれたもの

記者講習が終わり
毎日記事を書くなかで
自分に納得いくものを
母からもらった万年筆で書いてみた

デスクに手渡すと
「ペリカンだな!」
読みもしないで
書いた原稿を ビリっと破り
脇の大きなゴミ箱に ポイ! と捨てた
「説明しなくても判るんだ
 甘やかせのママが
祝いに買ってくれたものだな!」
デスクは ニヤニヤ笑っていた

何も話してないのに なぜ判るのか
私は ケゲンな顔でデスクを見た
「判るんだよ!」
また笑った
「親に見せられる記事を
早く書けるようになれ! 
母親に良く礼を言っておけ!」と

ゴミ箱から 破れた原稿用紙を
取り出して 突っ返された
私は「わかりました」
うなずくしか無かった

五十六年経って 未だに
ペリカン万年筆を 使う気にならない
もっぱら四百字の原稿用紙に
2Bの鉛筆で 書きなぐっている


京浜詩派 第229号より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

何を着たっていいじゃない 富七


何を着たっていいじゃない    富七


ファッションに
決まりはあるのかな

決まりがあるから
カッコいいもある
それを壊して
自由にするのも面白い
みんなが
着たいものを
着ればいい

それをそう着た
これをこう着た
どう着てもいいでしょ

こっちのがいい
あっちのがいい
どう着たっていい

感性や、趣味や
いろんなものが
違ってるから
面白いじゃない
靴下重ねて履いたって
シャツを重ねて着たって

何をどう着たって
いいんじゃない



京浜詩派 第228号より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

叱られる  手塚 一実

叱られる   手塚 一実


月一度
検診受けてる循環器のクリニック
薬も切れて二日たつ

横浜駅西口までの行程が
出がけに少しもたついて
十一時近くに家を出る
いつも混んでる医院なので
詩集も袋に入れて行く
普通なら相鉄西谷駅まで
十五分ぐらいの道のりが
背を丸め杖ついて
上目使いにとぼとぼと
四十分は かかったか

横浜駅から二十分
やっと医院に着いたとき
待合室に人気なく
午前の診療終わってた

永年通う医院は 診療時間を延長し
心電図 胸部レントゲン検査
看護士さんが採血
六種類の薬 一ヶ月分の処方箋
薬を切らしちゃいけない と
厳しく叱られた
整形外科のリハビリの事も話したが
運動せよ と叱られる

薬局からの帰り路
町内の床屋さんに辿りつき
冷たい水を頂いて ひと休み
四時ごろ家に戻ったが
なぜか心が温かい



京浜詩派 第228号より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

夏の日に        いむら ようこ

夏の日に        いむら ようこ


傍らで お気に入りのキラキラの靴を
一生懸命磨きながら
 おばあちゃん
 一緒に 鹿島神宮へ行けばよかったのに
 ピンク色の花が 咲いていたよ
わたしの心は 一瞬
あたたかさに 染まっていく

四季毎に
色とりどりに 咲く花たち
不思議にも思える幸せ感に
魅せられて
その時々に思いを込め 花を育てる
今 庭は 春を越え夏に育った花たち
日々草 桔梗 ダリア ペチュニア ランタナ
たくさんの色に 囲まれて
確かな季節が 優しさが 漂っている



幼子に届いていた 花たちへの想い
今 身振り 手振り 頬を膨らませ
パプリカを 歌い踊っている姿が
いとおしい

未来の形は それぞれに異なっていても
幼子たちが 自分の足で歩き 確かめ
育ちゆく道は
どんな時も 愛に守られ 包まれて
思わず転んでも 大丈夫だよって
立ち上げる勇気を 掴んでいく


  (パプリカ NHK2020応援ソング)


京浜詩派 第228号より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

ひばりの唄を聞きたい    安達 隆

 ひばりの唄を聞きたい    安達 隆

亡き妻の 
介護をしてくれたヘルパーさん二人
 久しぶりに食事 三人でマグロを食べる
 ママの料理に感動しながら

カラオケに行く
 そこで三人で交替に楽しむ
素晴らしい歌声
ヘルパーさんって歌がうまい

裕次郎 五木 堀内を唄う
 自然と調子が上がる
 楽しいひととき 最高の雰囲気

歌が好きだった 妻も空の下で
 唄っているだろう
 なつかしいひばりの唄を
         (211号 15年9月)


京浜詩派 第217号 2017.12)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

安達隆先生 遺志を引継ぎます  府川 きよし

安達隆先生 遺志を引継ぎます  府川 きよし


私が六〇まで働いた最後の勤務先は 鶴見の下町
汐田ヘルスクリニックの 健康診断の組織担当
そこの所長で 私の上司が安達隆先生
たいへんお世話になり 一緒に汗をかきました
民主医療機関連合会連 略して民医連に加わる
横浜勤労者福祉協会 主に汐田病院の外科医として
手術の腕が立ち やさしく信頼され 患者や地域に
生涯を捧げ八〇代まで働き 奮闘してきた安達先生
最後の勤務地は 平塚診療所もその一つです

私が年金生活になった時 主治医もあなたです
患者の私は そこで「京浜詩派」を手渡していた
少し経ったある日のこと 平塚診療所で診察中に
「私も仲間に入れて欲しい」と先生は言った
若い時の思いが甦ったのでしょう詩の仲間になった
先生は 横浜市大の医学生として 労働者の街で
セツルメント活動にも参加している
芥川賞作家の郷静子も参加していた「横浜文学」に
神奈川区で育った 先生も加わっていた
運河に浮かぶ船に 寝泊まりして働いていた
港の労働者を訪問し その時のことを書いた
「エッセイ」を 私は読んだことがある
その誠実な内容は 先生の将来を暗示していた

会員になって「京浜詩派」に 掲載した作品は
長年温めていた 得意のジョークの詩から始まり
最後は学生時代の恩師・医学部の教授の教えと
その後の自分の医師としての 体験も思い出し
「連載の詩」を 数篇書き始めていた
作品は生き生きして 仲間から注目されていた
期待されていた矢先 病魔に襲われてしまった
頭のなかに壮大な構想が 浮かんでいたことだろう
もう続きを読めなくなり 本当に残念でならない
先生に続きたいと 後輩の医師も
詩を学びたいと 仲間に加わっている
先生の遺志は 必ず引き継がれて行くことだろう
私はそれを 確信している
安達先生 安らかにお眠りください


京浜詩派 第220号(2017.12)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

三崎家のまぐろ   安達 隆


 三崎家のまぐろ   安達 隆

疲れた時 ふっと思い出すのは
三崎家のまぐろ
一杯飲みながら まぐろをつまむ
柔らかさと味
ホッとするひととき
健康な体を作ってくれる料理
煮込んだ大根と一緒に食べるのが
体にすごくいい

こころとからだにいいものを
作ってくれているのが
お店のママ
料理の腕前は右に出る者がいない
明るい笑顔 客との応答
この雰囲気が 何ものにも代えられない
まぐろが うまいのは
流れる演歌と ママの笑顔にあった
         (206号 14年6月)



京浜詩派 第220号(2017.12)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

ビルの谷間で   安達 隆


ビルの谷間で 安達 隆

マンションの三階
窓から 外を見る
鉄筋コンクリートの建物が
静かに林立している
動いているのは
白い雲 黒いカラス 屋上の洗濯物

人影はない
あまりの静寂に 圧倒される
だが この建物の中に
人が働いている 暮らしている
ビルの群れを見ている自分も
その中のひとり

みんな何かやっているのだ
いつまでも
平和な姿でいてほしい
         (204号 13年12月)


京浜詩派 第220号(2017.12)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

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