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小さな村を襲った戦争     いだ・むつつぎ 

小さな村を襲った戦争     いだ・むつつぎ 


村は立てつづけに戦死公報が入る
離れた所の五郎さん、五軒隣りの義男さん
しばらくし我が家の長男・久雄の戦死
おふくろが涙を流し、つらいのうと言った
その日の夜更け、どこからともなくB29の爆音
村は国鉄の鉄橋があるため、いつも危険地帯
その後、村の鉄橋は艦砲射撃の標的に
必勝の現人神(天皇)にすがるしかない
最後は神風(超巨大台風)で敵艦を次つぎ撃破
そう信じた村の衆は貧乏しても黙々と働いた
お米は一俵少なくてもダメ、お国へ供出だ
いつも供出を監視したのは村の駐在

村の衆の頭を大混乱させた八月十五日
現人神の天皇、自らラジオで無条件降伏を話す
白旗かかげた神様、天皇の姿を知った
村の衆は一日中、不安で不安でたまらない
大人だけでなく子どもまで半ば放心状態
これからどう生きるか何も分からん

おやじは息子の戦死を考えるヒマがない
隣り町に米軍が大挙して進駐してきた
村の道は機関銃を備えたジープが走り
小銃で武装した米兵たちが家の近くまで行進
村の若い衆は米兵見たさに生垣から覗く
一人がケトウは鬼でもなく人間じゃと叫ぶ


*太平洋戦争、日本の為政者 米兵の人たちをケトウ、鬼畜と呼び国民を無謀な戦争へ駆り立てた。私もだまされた。


京浜詩派 第220号(2017.12)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

大砲とおふくろ    いだ・むつつぎ

大砲とおふくろ    いだ・むつつぎ



たくさんの大砲を乗せた列車が行く
小学生のぼくは一つ二つと大砲を数える
家にかえり、ぼくはおやじに伝えた
数珠つなぎになった大砲、列車にのって西の方へ

聞いていたオヤジ、急に顔色を変え
バカモーン、ぼくの頭にゲンコツ
軍隊の動きを他人に話したら一大事
このことがおまわりに知れたら
おまえは駐在所へつれて行かれるぞ

ぼくの歯はカチカチ鳴り、やたらと涙が出る
そのときおふくろの声、ご時世だ気いつけろ
そしてぼくの肩を、そっとさすってくれた



京浜詩派 第219号より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

冬のボウフラサンバ いだ・むつつぎ 京浜詩派218号巻頭詩

京浜詩派 218号 巻頭詩 いだ・むつつぎ


「冬のボウフラサンバ」 いだ・むつつぎ 京浜詩派218号巻頭詩

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

リビヤネコと暮らす   いだ・むつつぎ (京浜詩は217号より)

リビヤネコと暮らす   いだ・むつつぎ


孫娘がひろってきた子猫を預かる
六日、十日すぎても子猫の貰い手はない
そのまま我が家に居つきナツと名前がつく
女のナツは子どもが家にくるとフーッと威嚇
たぶん子どもたちにいじめられた仕返し
それから体の蚤で分かった、ナツはノラの子?
妻も私もカミつかれ、爪で引っ掻かれた

一年後、ナツは薄の裏山を風の如く疾走
ある日、シマヘビをくわえ庭に戻る
生きた獲物、私に早く見せようと帰ってきた
ナツは意気揚々、私は抱っこし頭をなでる
私はヘビに急いで逃げろと言ったがダメ
足元に横たわるヘビ、私はやさしくけとばす
気づいたヘビ、ゆっくりと草むらへ消えて行った


※五千年前、アフリカで野生猫を家畜化。その名はリビヤネコ。ナツは図鑑のリビヤネコと同じ。

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

村は戦場だった  いだ・むつつぎ(京浜詩派216号より)

村は戦場だった  いだ・むつつぎ


キーン、金属音ひびかせ村の上空に
やってきたのは米グラマン艦上戦闘機
その姿は獲物をねらう猛禽類そっくりだ
米B29爆撃機、国鉄天竜川の鉄橋をめがけ
爆弾攻撃、爆弾はそれ田畑で爆発
ぼくは友だちと線路の土手に伏せて助かる
凄い爆風で屋根や塀に被害がでた

村に陸軍対空機関砲部隊がやってきた
大和魂の兵隊さん、グラマンをぶち落すぞ
ぼくら子どもたちは、そう話しあった
だが、実際は日ごとに違ってきた
百姓たちは連日の空襲で野良仕事ができない
ぼくらも空襲で学校に行けない
見つかれば機銃掃射で殺されてしまう

村に機関砲が八門あったのに
機関砲の発射音を聞いたことがない
グラマンは毎日のようにくると言うのに
何故だ、ぼくは幾ら考えても分からん
その頃、米軍艦砲射撃で鉄橋の橋脚に被害
列車は片側路線を使い何とか動いた

超低空のグラマン、風防を開けやってくる
米兵操縦士の赤ら顔がよくみえた
ぼくは押入れにあった空気銃を持ちだす
庭の木陰から操縦士の顔をめがけて撃った
おふくろが防空壕からとび出してくる
むつつぎや、危ないからやめろ……
それでもぼくは夢中で引き金をひいた



テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

堂々たる証し  いだ・むつつぎ

堂々たる証し  いだ・むつつぎ

堂々たる証し いだ・むつつぎ  「京浜詩派 211号」より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

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