ポーランド現地ガイド 古久保 和美
ワルシャワ蜂起公園
地下道から捕まえられた兵士を
哀れな目で見つめる神父像
一八三〇年 フランス革命に呼応して
ポーランド独立のための蜂起失敗
ロシア帝国に併合された
その戦いにショパンが参加したとされ
生涯帰国を許されなかった
七月五日 ワルシャワは大変だったんです
ワルシャワ蜂起公園
先進二〇ヵ国会議に参加のため寄り道した
トランプ大統領が演説したという
「難民はイヤだよ」という
ポーランド ファースト派と
EUの外交を支持する
トランプ ゴー ホームと叫ぶ側と
ポーランド市民は二つに分かれてしまいました
現地ガイドさんが興奮して話していた
ちょうどボスナンという
ポーランド発祥の地へ向かうところ
外国旅行中 マスコミ情報を聞かない私
だから とても新鮮
七月八日 アウシュビッツ見学の日
当地に一〇年余住んでいる日本人ガイドさん
うれしいニュースがありました
国連で核兵器禁止条約を採択しました
クラクフのホテルから一時間半
九時半というのに駐車場には数台の観光バス
見物客でごった返している
アウシュビッツ収容所
戦争のユネスコ負の世界遺産第一番目
収容所内だけの特別な案内ガイドがつく
約二〇〇人いる案内人の中で
たった一人の日本男性がリード役
二〇年のベテランだ
『働けば自由になる』
正門に掲げられた横プレート
一号棟で展示されているのは
遺留品の山
カバン や 靴 や メガネのフレーム
金髪の髪の毛の山
繊維工場でじゅうたんなどになった残り
ガラス室で保存されていても
風化は避けられない
いくら入浴と称しても
髪を切られ 坊主にさせられることで
死を意識したはず
チクロンBの空き缶の山
浴室ならぬ ガス室で
天井の窓から降り注いだのは毒ガス
大勢の見学者の一人として
コンクリート壁の部屋にいる
不意打ちによる悲鳴が聞こえる
実際は多国語が混じり合うため息
遺体処理はすべてユダヤ人だった
選ばれしカポ
二号棟とビルケナウは三倍の広さ
囚人が暮らした建物が残っている
かつてアンネフランクが暮らした棟もある
高圧電流が流れる鉄条網と
ガス室まで伸びている引き込み線
はるかに見える煙突
ドイツ領から運ばれた囚人の九割は
番号もつけられず即貨物車で終点へ
彼は語る
ユダヤ人を絶滅するという
狂気の沙汰に至る人間の思考過程
差別思想は過去の問題ではない
いかに他民族と共存共栄する社会を築くか
一人の人間として平和に貢献していきたい
もっと日本から多くの見学者に来てもらいたい
京浜詩派 第220号(2017.12)より