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福島の子と   梅津 弘子

福島の子と   梅津 弘子


診療所 歯科医院 開院しました
こども園 学校も 再開してます
ホテル建設の準備 順調

楢葉町の町長 ホームページで
にこやかに 「帰って来て」 と
微笑む

楢葉の子どもたち 校庭でサッカー
除染されているから と
でも 一歩も 山に入れない
食べる物 六年たった今
放射線を測定
友達は 新潟 大阪から戻って来ない
甲状腺ガンに おびえる日々

「神奈川に こらっせ」と
三十人の横浜の学生 カンパを集め
夏 楢葉の子らを呼ぶ
丹沢の山裾の川べりでスイカ割り

キャンプファイア バーベキュウー
蒲鉾工場見学 美味しいね

この交流 六年目
学生も 先輩から 後輩へ
今年も 楢葉の子らは楽しみにしている

楢葉の人
「この国はすぐ忘れる」 嘆く
忘れない 人もいるよ
丹沢の風 森 
待っているよ



京浜詩派 第220号(2017.12)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

裁判長 聞いて下さい    梅津 弘子

裁判長 聞いて下さい    梅津 弘子



東京地裁前 白髪まじりの集団が朝早くから集まる
箱根から 三浦半島から
電車 バスを乗り継いで 霞が関にきた

この歳で 裁判の原告になるなんて
老人たちは 怒りに燃えている
小柄な委員長が 年金減額憲法違反と叫ぶ
330人が傍聴券を求めて並ぶ

ざわめく法廷に 裁判官が入廷
一瞬 静かな空気がながれ 
戸惑う老人たちに
弁護団長 「年金は財産権」と勇気づける

「裁判長」 加藤原告団長の声が法廷内に響き
原告の陳述が始まる

老いていく身に 国の酷い仕打ち
切々と 訴える
原告団長の 肩を 何万という
高齢者の悲鳴が支える

田中原告も 
夫亡き後 病気になり
月額四万八千円の年金で生きていけず
家を担保にして生活している と
傍聴席の老人たち 禁じられているが思わず 拍手
それを制止されることもなく 陳述がおわり
裁判長は 二人の原告に ご苦労様 
ねぎらいの言葉
その言葉は 裁判長の心の声だろう

百年安心 と言った あの大臣の顔が浮かぶ
その政権の下で どんな判決がでるだろう



「京浜詩派 第219号」(2017年9月発行)より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

めがね 梅津 弘子 (京浜詩派 第218号より)

めがね          梅津 弘子



赤 黒 水色 ランドセルが舞い
三人 五人と 明るい声
昼下がりの住宅街 道々に漂う

校門前 六人の子どもの輪
孫の智ちゃんの顔もある
あれ めがね いつから

「智ちゃん 勉強のしすぎかな」 私の声に
 隣の家の翔ちゃん すかさず
「智ちゃんのおばあちゃん 違うよ
 ゲームのしすぎだよ」

あれ 一本とられた
智ちゃんのホッペが膨らむ

数日後 息子一家と昼飯会
めがねが話題
遺伝ですって ママの言葉
あらら サッカーの時どうするの
ゴーグルです 四万円もするんです
あらら ママのパートは減りそうもないね

隣のテーブルから
「昔はな 弱視は兵隊になれなかったんだ」 と
見知らぬ古老の声
「戦争に行かなくて良かったのですか」
息子は なにやら ホットした声
しばし
古老の 戦争体験話に 耳を傾ける





「めがね」 梅津弘子 (京浜詩派 第218号より)

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

友の誘い   梅津 弘子 (京浜詩派217号より)

友の誘い   梅津 弘子


初冬のある日 徳島の俳人から
ラオスにいく 羽田で会おう
と 短いメール
老いても 好奇心パンパンの彼女
今度は ラオスか
軽い気持ちで ラオス行きに乾杯

終活で 身の回りを整理
子も孫もいない
ふと 一つ何か残したい
そこそこ お金があるので
ラオスの子どもらに学校を と
五百万円をポンと出す
首都から離れた奥地
電気も井戸もないらしい
食べ物も 蛙 蟻スープ

ふと見る外の 日本の夜景に
ラオスの 暗闇を重ねる
日本にも 食べられない子もいる
ブラックバイトで 苦しむ学生も
そんな言葉を飲み込んだ

翌日 友は六人の仲間と発った
数日しても メールが来ない

旅の疲れで高熱で床に臥せていた
蛙は たべられなかった
蟻は 一匹飲み込んだ
でも 子どもたちの目がキラキラしていた

開校式には 一緒に行こう との
誘いの返事 まだ 出せない

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

男の日傘      梅津弘子(京浜詩派216号より)

男の日傘       梅津弘子

ゴーヤの蔓とやぶ蚊に悪戦苦闘中
 奥さん 奥さん
近所の青木さんの声
また からかわれるんだ
振りむかない 無視 無視 と 決め込んだ
奥さん 耳が遠くなったんかね 
肩をたたく

絽の着物 傘 下駄 あら 粋ね
 雨も降ってないのに 傘
青木さん ニヤリと 傘をクルクル廻す
 これ 男の日傘なんだよ
 哲のヨメの敬老の日のプレゼントさ
 帽子は蒸れてね
 皮膚がんも気になるからね

男の日傘 デパート売り場にもあったな
図書館に行く時 チラホラ 見たな
九十近い青木さんは街のハイカラさん

ところで 奥さん
隣町の敬老会 お赤飯 お茶
ゲーム 演芸会もあったらしいよ
この街は カステラ配って おしまい
なんで 違うんだね
百歳の祝の銀杯もメッキになって
この国は 老人を大事にしないね
ワシも 早くあの世に行きたい
そう 言っちゃ 医者通い
矛盾しているな・・・


カタカタ 下駄の足音を響かせて 
日傘をクルクルまわして 去って行った

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

旧友    梅津 弘子

旧友   梅津弘子

旧友   梅津弘子 「京浜詩派 211号」より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

人殺しはイヤだ  梅津弘子

人殺しはイヤだ 梅津弘子

人殺しはイヤだ  梅津弘子  「京浜詩派 210」より

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

恐竜展 梅津弘子

恐竜展 梅津弘子



京浜詩派208号より「恐竜展」 梅津弘子

テーマ : 詩・ポエム
ジャンル : 小説・文学

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